第60章 Prelude to collapse
「斗真…!」
玄関で靴を履くと斗真は俺の方を振り返る。
その頬は赤く腫れていた。
「ごめん斗真…顔…」
斗真「あいつ…思いきり殴りやがって。役者の顔を」
そう言って笑ってくれた。
「冷やさないと…」
手を伸ばした俺の手を斗真が握る。
斗真「………さっき言った事は本当だから。覚えておいてね」
「………」
斗真「カレーごちそう様。美味しかったよ」
「気を付けて…」
斗真「ありがと。じゃあ」
そして斗真は出て行った。
暫くの間…ぼんやりと扉を見つめた後、俺は大きく呼吸をしてリビングへと戻った。
ドアを開くと…潤はソファーで頭を抱えて座っていた。
「………潤…」
ピクリ、と肩が動いたけれど潤は動かない。
「………ごめんなさい…」
潤「………」
「潤との事…相談したくて…それで家に呼んだんだ」
潤「………」
「ごめんなさい…」
潤「………何で…キスしたの」
「………ごめんなさい…」
潤「………」
「潤を…裏切った。許される事じゃない。でも…ごめんなさい。許してくれるまで謝るから…だから…」
急に潤に手を握られ、言葉が止まる。
すると…漸く潤が顔を上げた。