第60章 Prelude to collapse
斗真「それで…潤と何かあったの?」
ソファーに座るなり、斗真が切り出した。
「………」
斗真「俺それが聞きたかったんだからさ」
「………うん…」
コーヒーを一口飲んで一呼吸置いた。
「不妊治療…止める事にしたんだ」
斗真「………そっか…」
「俺が…周り見えなくなってた。どうしても子供が欲しくて…『あと1人あと1人』って…それで潤と喧嘩する事多くなった。それで…こんな事までして…治療やらなくてもいいって。」
斗真「うん」
「宮城でその話して…ちゃんと夫婦として向き合おうって思ったんだけど…でもそこから俺達…おかしくなった。潤が…俺の事避けてるっていうか…ギクシャクして…何か…ちょっとしんどくて…」
斗真「そんな事…あったんだ」
「ごめん…こんな話」
斗真「俺に謝る事ないよ。話してくれてありがと」
斗真の手が伸び、俺の手をギュッと握った。
顔を上げると…斗真は優しく俺を見つめていた。
その時急に思い出した…あの日の記憶。
潤との結婚が決まっていたあの日。
ここで…同じソファーの同じ場所で。
斗真に告白された。
そして…キスを…した。
遠い日の記憶が…鮮明に思い出された。
斗真「翔くん…何考えてる?」
「え…何…?」
斗真「思い出した?」
斗真の言葉に…ドキッとする。
「わ…分かんない…」
そう言って握られた手を離そうとすると…逃がさないと強く握られた。
「斗真…」
斗真「翔くん…好きだ」
斗真の言葉が…リビングに響いた。