第60章 Prelude to collapse
ー潤sideー
翔を抱き締めたい衝動を押さえながら俺はキッチンへと向かう。
「おはよう」
翔「あ、おはよ…」
それしか言葉は出なくて。
冷蔵庫からお茶を取り出してリビングに視線を向けると翔は俺に背中を向けていた。
やっぱり…俺が避けてるの気付いてる。
だからきっと翔も…俺を避けてる。
「翔。夕飯作って待っててくれたんだよな。ごめんな。連絡すればよかった」
翔「ん…大丈夫。お仕事お疲れ様…」
「もう残ってないか?お腹空いたから食べたい」
翔「あ…ごめんなさい。朝太陽と一緒に…」
「あ…そっか」
翔「ごめんなさい。何か作るよ」
慌てて翔が小走りに走って来る。
俺と視線を外しながら冷蔵庫から卵とベーコンを取り出した。
翔「ベーコンエッグで…いいかな」
「ありがとう」
ブレッドケースから食パンを取り出し、トースターで焼いた。
ベーコンとパンの焼ける音といい匂いが漂ってくる。
けれど俺達の会話は無くて…。
顔も合わさないまま準備をした。
出来上がったベーコンエッグを翔が皿に盛り付けてるとそのタイミングでパンが焼けた。
翔「はい」
「ありがとう」
いつもなら…俺の真向かいに座り、他愛ない話をしながら朝食に付き合ってくれる翔。
けれど…翔はパタパタとリビングを出て行った。
追い掛けようと…立ち上がったけれど、やっぱり真央との事を思い出し、立ち止まった。
追い掛けて…どう謝ればいいんだ。
もう俺は…ずっとこの思いを抱えたまま翔と生きていかないといかないのか。
俺は…椅子に座り、翔の料理を掻き込んだ。