第60章 Prelude to collapse
ー翔sideー
太陽を学校に送り出し、家事を終わらせてからゆっくりとテレビを観ながら仕事の資料に目を通す。
テレビで流れるワイドショーの内容も、資料も頭に入って来ない。
「お父さんにおはようしてきたら?」
太陽が出掛ける前にそう言ったら潤が起きてくるかもしれない。
でも潤は起きて来なかった。
太陽を送り出し、戻って寝室を覗くと潤はもう眠っていた。
きっと疲れてるんだ。
そう思ってもやっぱり潤との事が気になってしまう。
ソファーでぼんやりとしていると…寝室の扉が開く音がした。
潤だ…。
ゆっくりと近付いて来る足音。
俺は気付いてない振りをしながら潤を待った。
静かに開く扉。
いつもだったら…そのままギュッと抱き締められて。
潤知ってる?
潤に驚かされるのが嬉しいから…たまに気付いてても気付かない振りをしてた。
びっくりしたって言ったら…潤はいつもキスをくれる。
「おはよう」って…潤の寝起きの掠れた声が好き。
俺はそれだけで笑顔になった。
そんな他愛ない時間が俺には凄く大切だったんだ。
けれど潤が近付いて来る気配はなくて。
潤「おはよう」
そう言われて振り返るともう潤はキッチンに向かっていた。
「あ、おはよ…」
振り返っても潤の視線は俺には向かない。
駄目だ…涙が溢れてくる。
俺は涙を気付かれたくなくて…潤にまた背中を向けた。