第59章 宮城の夜
案の定、にのはトイレには居なかった。
トイレの少し先にあるスペースで自動販売機をぼんやりと見ていた。
お金を入れようとしていたからその横から先にお金を入れると…俺の存在に気付いてなかった様で…驚いて俺を見ていた。
和「何…何か用?」
「奢るよ」
和「いいよ別に。こんなの…」
無視してベンチに腰掛けるから…代わりにボタンを押した。
にのの好みは分かってるから…俺のと2本買い、片方を渡した。
和「いいって…」
それでもまだ拒むから…プルタブを開けて渡した。
「溢しそうだから受け取ってくれる?」
そう言うと…漸く盛大な溜め息を付きながら受け取ってくれた。
「ありがとう」
和「何が」
「逃げる事も出来たのにしないでくれて。話…聞いてくれて」
和「………」
「あんな場面…見せてごめん」
和「………見たくなかった。早朝散歩なんて年寄みたいな事やらなきゃよかった」
「………仲良いな」
和「………聞きたくないけどさ。何で?何してんの?」
「………分からない。でもあの時…翔との事でぐちゃぐちゃで…そしたら…真央に言われた。好きだって…それで…」
和「何考えてた?真央ちゃん抱きながら何考えてた?」
「………頭…真っ白で…」
和「最低…知らなかった。潤くんて最低だったんだね」
「俺も…初めて知った」
そしてまたにのの大きな溜め息が聞こえた。