第59章 宮城の夜
リハーサルはスタッフの人に任せて俺は部屋に閉じ籠った。
乱れたままのベッドの上で…俺はうつ伏せになっていた。
時折鳴るスマホも…触れる気になれない。
どれ位の時間が過ぎたのだろう。
部屋の扉が開かれる音がした。
翔「潤…居るの?」
聞きたかった声。
愛しい声。
声だけで…身体の芯から癒される。
翔「体調悪いって聞いたけど…大丈夫?」
ギシッとベッドが揺れる。
翔「………ツアーの事でいっぱいいっぱいになってる?それとも…」
翔の指がそっと俺の髪に触れる。
その手を掴むと翔が驚いた顔で俺を見つめた。
翔「潤…大丈夫?」
愛しい人が…逢いたかった人が目の前に居た。
起き上がりながらそのまま翔をベッドに押し倒した。
翔「じゅ…」
「………愛してる。翔…愛してるんだ」
翔「潤…」
そのまま翔の胸元に顔を埋めると…翔の香りがした。
こうやってしっかり抱き締めたのも…どれ位振りだろう。
………今俺が過ちを告白すれば…翔は…どうするだろう。
きっと…居なくなってしまう。
もうこうして…この腕に翔を抱く事はなくなってしまうのかもしれない。
俺は…それに耐えられるだろうか。
自信がない。
翔「………潤…俺達…」
今は何も聞きたくない。
聞きたくなかった。
目の前の現実から…逃げたい。
そのまま俺は翔の唇に自分のを重ねた。