第59章 宮城の夜
「それじゃまたな~」
深夜2時を回ろうかという頃。
解散した俺達はそれぞれホテルへと戻る。
偶然にも。
真央の取っていたホテルは俺と同じ場所で。
一緒にエレベーターに乗り込んだ。
「しかしまぁ旬のやつ…最近よく泣くよな」
真央「子供出来てから涙もろくなったみたい」
「言えてる」
真央「………潤くんは…あまり変わらないね」
「え?」
真央「子供生まれても…あまり変わらない」
「………変わったよ。俺も…涙もろくなった」
真央「そっか」
「………あのさ真央…」
真央「………何?」
「この間さ…電話で何か言いかけたじゃん」
真央「そうだっけ」
「………何だった?」
真央「………忘れた」
真央がそう言うと…真央が降りる階に着いてしまう。
真央「じゃあ…明日楽しみにしてるね」
「………ありがと」
真央「おやすみなさい」
「おやすみ…」
エレベーターの扉が閉まり、動き出す。
「はぁ…」
真央の雰囲気が…いつもと違うのは気のせいだろうか。
俺を見つめる視線が…まとわりついて離れない。
「飲みすぎたかな…」
早く風呂に入りたい。
眠れば明日には翔が帰って来る。
これからの事…話さなきゃ…。
少しふらつきながら…俺はベッドに仰向きで倒れる。
『子供はいらない』
つい口から出てしまった言葉。
正確な言葉ではない。
無理してまで欲しいと思えない。
翔が辛い思いしてまで欲しいと思わない。
丁寧に言えば…翔を傷付けなかったのに。
でも…ああ言わないと…翔に伝わらなかったかもしれない。
「はぁ…」
頭を抱えていると…突然部屋をノックする音が聞こえた。