第59章 宮城の夜
翔さんと潤くんが気になりながらも時間はあっという間に経ち、ライブは始まった。
初日という事もあって会場は盛り上がり、大成功で幕を閉じた。
終わると控え室で各々過ごす。
翔さんは直ぐにタオルを取ってシャワールームに歩いて行く。
いつも連れ立って行く潤くんは…背を向けたままスタッフと話をしていた。
「翔さんっ…」
俺は急いで翔さんを追い掛け、脱衣所で捕まえた。
「翔さん…!」
翔「………にの。お疲れ」
「翔さん…」
翔「ん?」
首を傾げる翔さんに…俺はどう何を言っていいか分からず…ぎゅっと抱き締めた。
翔「にの。汗臭いよ」
「………一緒に入ろ?」
そう言うと…静かに頷いた。
一緒に服を脱ぎ、個室に入りシャワーを流した。
言葉は無かったけど…。
でも翔さんを支えたい。
そう思った。
翔さんが拒絶しない限り俺は…翔さんを支えたい。
翔「………ありがとねにの」
「何も…してないよ」
翔「にの…あったかい」
「ふふ」
翔「………子供…欲しくないって。潤が」
「………え…」
翔「俺が辛い思いしてまで欲しいと思わないって…言われた」
「………」
翔「俺の事…思ってくれてるんだよね。潤は。だから…受け入れたいけど…まだ…気持ちの整理付かなくて」
「………おいで」
翔さんを抱き締め、シャワーを浴びながら背中を撫でる。
翔「っっ…ふぅっ…にのっ…」
翔さんの泣き声は…シャワーの音に掻き消されていった。