第59章 宮城の夜
開かれた潤の瞳は真っ直ぐに俺を見据える。
何も言わずに…ただジッと。
俺もただ黙って…その瞳を見つめた。
暫くすると潤の手が俺に伸びた。
手の平が俺の首筋に触れ、そのまま引き寄せられる。
俺の身体が潤の上に乗る体勢になった。
潤「………分かってるんだ。分かってる…でも…」
「………」
潤「斗真はずっと…翔の事好きなんだ。今も…忘れてない。それが分かるから…嫌なんだ」
潤の唇が…俺の髪に触れる。
「………真央ちゃんと…一緒だよ」
潤「………そうだな」
「うん…」
潤「………翔」
潤の指が俺の髪を撫でながら絡めとる。
その感覚が心地いい。
潤の上で潤に身体を委ねていた。
潤「………言いたくない。こんな事言いたくないけど…」
「………」
潤「不妊治療始めて…俺達おかしくなったよな」
俺は黙って顔だけを潤の方へと向けた。
「………言うと思った」
潤「………支えようと思った。それが俺の努めだと思うから。でも…こんな風になるとは思ってなかったよ…。ごめん…頼りない旦那で…」
「………俺は…それでも続けたい。今だけだって思ってる。赤ちゃんが生まれれば…元に戻る。こんな苦労終わりだもん」
潤「………そうかな…」
ぽつりと潤が呟いた。