第58章 cleavage
「周りが見えてないって…だから真央ちゃんとの事疑ったって思ってる?」
潤「そういう事言ってるんじゃないだろ」
「じゃなきゃ黙って出て行こうなんて思わないでしょ」
潤「翔…!だからやましい事なんてないって!何で信じてくれないんだよ!」
「信じてないんじゃない!嫌なんだよ。分かってるだろ?やましい事がないからとかじゃない!潤と彼女が二人きりになったってだけで俺は…嫌なんだよ。何度も言ってきただろ」
潤「………自分はいいのかよ。俺は駄目だけど自分はいいのか?何をしても」
「え…?」
潤の瞳が…鋭く俺を捉える。
「何…何言ってるの…」
潤「自分は何も思ってないから…抱き合っても問題ないって?好きだって言っても問題ないって?」
「潤…何言ってるの?意味が…」
潤「………斗真との事…俺が何も知らないと思ってるのか?」
斗真…?
突然の潤の言葉に俺は頭が混乱した。
「斗真って…どうして斗真…?抱き合うって…」
「………残り香で俺にはすぐ分かるよ。隠せてたと思った?」
そう言われて…斗真がお見舞いに来てくれた日の事を思い出す。
「あれは…」
潤「今だって…楽しそうに話してたよな。『好きだ』って…」
「違う潤それは…」
潤「俺は翔が斗真とどうにかなるなんて思わない。けどそれと…何も気にしてないのとは違う。同じだろ?」
「潤聞いて!斗真は俺の事心配して…」
潤「同じ事だろ」
「………潤…」
「冷静に…なれないな俺達。話せば話す程…こじれてくる」
「………」
潤の言葉に返せないでいると…潤が扉を開いた。
潤「明日の夜には帰るから」
バタン、と扉を閉めて出て行ってしまった。
「………潤…」
虎鉄を抱っこしたまま…俺はその場に座り込んだ。