第58章 cleavage
甘えてくる虎鉄を抱っこしてると玄関の方で足音がした。
そのまま部屋を出ると鞄を抱えた潤が靴を履いている途中だった。
「潤…出掛けるの?」
潤「うん」
声を掛けても潤は俺に背を向けたまま。
「………明日また宮城に行くから今日はゆっくりするって…」
潤「そう思ってたけど気が変わった」
「………」
そのまま潤が立ち上がり、扉に手を掛けた。
「待って潤…!」
慌てて駆け寄り、腕を掴んだ。
そうすると…漸く潤が振り返る。
潤「………何?体調悪いの?」
「違う…違うけど…昨日の事…ちゃんと話したくて…」
潤「………俺の気持ちは伝えた」
「そう、だけど…」
潤「………」
「こんなの…嫌だ。ギクシャクしたままなんて…俺達今まで無かったのに…」
潤「………そうだよな…でも…」
「………でも…?」
潤がゆっくりと…俺の掴んだ手を離す。
潤「少し…頭冷やした方がいいのかもしれないよ俺達」
「………どういう…事…?」
潤「翔は…不妊治療の事で頭がいっぱいになってる。周りがちゃんと見えてないと俺は思う」
「………真央ちゃんとの事言ってるの?」
潤「だから…」
潤が大きくため息を付いた。