第58章 cleavage
「大したもんじゃなかった?俺のあげたハンカチ…いつも使ってくれてるからてっきり気に入ってくれてるって思ってた。俺の…勘違いだったのかな…」
潤「ごめん翔。言葉のあやだよ。わざわざ持って来なくていいって意味で言ったんだよ。ごめん…!」
「いつまでも持たせるのかよ俺のハンカチを彼女に!」
潤「ごめん…」
「………何で持ってんだよあの人が」
潤「………この間たまたま会ったんだ。その時…ドラマの事で悩んでたから…泣いてたんだよ。放っておけなくて…その時貸したんだ」
「………」
潤「そんなにずっと一緒に居た訳じゃない。だから言わなかったし忘れてた。翔に言われるまで思い出さなかった」
潤の必死の取り繕いも…俺の神経を逆撫でしかされない。
イライラしてしょうがなかった。
「やっぱり…俺のハンカチ大して大事にしてくれてなかったんだね。忘れてたなんて」
潤「だから違うって!そういう意味じゃない!」
「もう言い訳はいいよ!」
俺は視線を潤から窓ガラスに向けた。
潤「言い訳…?翔…言い訳って何だよ」
「………」
潤「………疑ってんのか。真央との事…」
黙っていると…潤もそのまま黙ってしまった。
それから自宅に戻るまで…俺達は一言も言葉を交わす事は無かった。