第58章 cleavage
潤「お待たせ翔。ごめんなー」
笑いながら潤がバタバタと後部座席に乗ってくる。
「………」
俺は黙って前を向いたまま返事をしなかった。
潤「待っただろ?ごめんな。でもやっと固まってきたよ。オープニングの…」
「真央ちゃん来てたよ」
潤「え?」
「だから…真央ちゃんが来てたよ」
一気に静まる車内。
気付けば車はもう動き出していた。
潤「真央?どうして」
真央…
未だに呼び捨てなのにもざわつく。
分かってる。
今でも仲がいいのは知ってる。
分かってる。
でも…駄目だ。
手が震える。
我慢出来ない。
「これ返しに来てたよ。連絡するって言ってたからその内LINEでも来るんじゃない?」
持っていたハンカチの入った袋を…俺は乱暴に潤に突き出した。
驚きながらもそれを受け取る潤。
潤「翔…もしかして…怒ってる?」
「別に。でもわざわざスタジオに来るなんてびっくりしたけどね」
潤「いや…『ハンカチ返したい』って言われたから『スタジオに籠るから無理だって…ハンカチなんていつでもいいから』って伝えたんだよ。来いなんて言ってないよ?」
「ハンカチなんて?俺があげたハンカチがどうでもいいって!?」
潤「あ、違う翔…!」
伸びてきた潤の手を俺は全力で振り払った。