第58章 cleavage
「翔…この薬…」
翔「………」
翔は黙って俺の前に立ち、薬を手に取った。
翔「折を見て話そうと…思ってた」
「何を…」
翔「薬…ちょっと変えたんだ」
「変えたって…今までのホルモン剤じゃ駄目なのか?」
翔「駄目だったじゃん。俺は妊娠したって…流産する可能性が高い。内側から強くしないといけない。だから…今までよりもっと強いホルモン剤にしたんだ…」
「だから…こんな強い副作用が…」
翔「………」
頷きながら翔は…グラスに水を注いだ。
「待てよ翔。こんな強い副作用のあるものいくつも…俺は反対だ」
翔「そう言うと思ったから…言わなかった」
「当たり前だろ。それにまだ身体だって本調子じゃないだろ。なのにこんな強い薬…何かあったらどうするんだよ…」
翔「大丈夫。先生と話して決めたんだし…俺は頑張れるから」
「翔…でも…」
翔「お願い潤。潤が支えてくれなきゃ…俺頑張れない」
翔の手が俺の手に重なる。
翔「赤ちゃん…今度こそ作ろう?俺と潤の赤ちゃん…」
「………」
喉まで…出そうになる言葉。
それを俺は…飲み込んだ。
代わりに翔の身体を抱き締める。
「………分かった。頑張ろう。でも…無理はするなよ」
翔「うん」
しっかりと身体を抱き合い、支え合った。
翔…。
君が望むなら俺は…ずっと君を支えたい。
でも俺は…俺は…。