第57章 友情と愛情
ー斗真sideー
店に入ると奥に居た男が俺に向かって手を振る。
それに返しながら俺は隣に座った。
「悪い。撮影で忙しいのに呼び出して」
旬「いや。何か声のトーンがいつもの斗真っぽくなかったから気になってさ。お前の方こそ戻んなくて良いのかよ」
「明日朝一で戻れば間に合うから」
旬「そっか」
微笑みながら旬が俺を見つめる。
旬「それで…翔くんに会ったって?」
「うん…」
旬「先週優とお見舞いに行った時は…まだベッドから降りられなかったもんな。回復してるみたいで良かった」
「………」
旬「潤とは話したのか?」
「少しだけ」
旬「………斗真…」
「俺…潤と約束したんだよ。翔くんを泣かせないって。幸せにするって…」
旬「………」
「翔くん…泣いてた。壊れそうだった。潤が付いてても泣いてたんだよ」
旬「今回の事は…潤のせいじゃないだろ。誰も悪くない」
「分かってる。分かってるよ…でも…約束したんだよ。これで…何回目なんだ…」
旬「斗真…どうしたんだよお前」
旬の手がそっと俺の腕を掴む。
旬「今日のお前…おかしいぞ。何かあったのか」
分かってる…俺…おかしい。
溜め込んでいた気持ちがまるで…キャパを越えて爆発しそうな…そんな…。
「………呼び出したのに悪い。帰るよ」
旬「おい。斗真!」
旬の遮りを振りほどいて俺は店を後にした。