第57章 友情と愛情
「大丈夫?」
翔「平気。ありがとう斗真。車椅子大変だったでしょ」
「こんなの平気だって」
病室に戻り、車椅子から立ち上がろうとする翔くんの手を取る。
そのままベッドに座らせようとすると翔くんがバランスを崩した。
翔「あっ、ごめ…」
「おっと」
倒れてきたその痩せた身体を抱き締める。
ふわり、と翔くんの匂いが鼻腔を掠めた。
愛しい人の香りと感触に支配された俺は…腕の中のその人を直ぐに手放す事が出来なかった。
翔「斗真…?」
出逢って約20年。
あの日から…ずっとずっと心の中に居る人。
俺の…愛する人。
でも…この人は…愛してる人が居る。
その人は…俺の親友。
大事な親友。
『幸せにする』
『絶対泣かせない』
お前は…俺と交わした約束…守ってるのか?
翔「………斗真…」
「ごめん…少し…このままで居させて」
翔くんの肩に顔を埋め…強く抱き締めた。
抵抗する気力が無いのか、翔くんはただ静かに俺の腕の中に収まっていた。
神様…この人がまた笑顔になれます様に…。
こんな試練…もう与えないでくれよ…。
何度も俺は心の中で叫んでいた。