第56章 Struggle
そっと抱き寄せたその身体は…ピクッと震えながらも静かに俺の腕の中に収まった。
抱き寄せても翔は新生児室から目を離さない。
「どうしたの?部屋に居ないから心配した」
翔「………ごめん」
「謝らなくていいよ。でもどうして…ここに居るの」
翔「………赤ちゃん…見てた」
「うん」
翔「………覚えてる…?太陽が…ここに居た時の事」
「覚えてるよ。毎日一緒に見に来てたよな。授乳の時間が待ちきれなくて…看護士さんに怒られて」
翔「うん」
「あの小さかった太陽が…もう小学生だもんな」
翔「………俺…自分は妊娠しやすいって…勝手に思ってた」
「………」
翔「避妊…忘れた事無かった。ゴム買い忘れた日は…我慢してた。それ位きちんとしてた。それでも…太陽が出来た。だから…またすぐ出来るもんだって簡単に…なのに…」
「翔…」
抱き締めた腕に…ぽたぽたと翔の涙が溢れる。
翔「こんなに望んでも…出来ないなんて…どうして…」
「翔。自分を責めるな」
翔「っっ、ふっ…う…ごめんなさい…潤…」
崩れる身体をしっかりと支えると翔は俺にもたれてきた。
涙を流す翔を俺はいつまでも抱き締めていた。