第56章 Struggle
「はぁ…駄目だ」
洗面台で…ぼんやりと俺の顔を見つめる。
………何か…やつれた…。
鏡に映る…生気のない表情。
こんな顔してちゃ…そりゃ気使うよな。
でも…まだ前向きになれない。
「はぁ…」
眠りたい。
何も…考えたくない。
手を洗い、トイレを出て病室に戻ろうとした。
「すみません。櫻井翔さんの病室ご存じですか?」
遠くから声がする。
「知りません」
突き当たりの部屋からそっと覗き込むと…俺の部屋に居た看護士さんが男性に声を掛けられていた。
「ここに入院なされてるんですよね。容態だけでも聞かせて下さいよ」
看護士「患者さんのプライベートにはお応え出来かねます!」
「貴方も見たでしょ生放送のあれ。流産したって本当?」
看護士「知りません!お引き取り下さい!」
この人…確かどっかの雑誌の記者…。
「じゃあさ、旦那の松本潤。来てるでしょ?それだけ教えて?」
記者の人の腕が看護士さんの腕を掴む。
「止めろよっ…!」
俺は…そこから走って飛び出し、看護士さんの腕を引いていた。
「いい加減にして下さい!他の方の迷惑です!」
「居るじゃん…」
俺を見てニヤリと笑うその人に…背筋が寒くなるのを感じた。