第56章 Struggle
カーテンを思いきり開くと明るい日差しが差し込んだ。
眩しそうに翔は顔をしかめる。
「いい天気だなー今日」
翔は何も答えない。
「気分転換にちょっと屋上に行かない?」
翔は静かに首を横に振った。
「翔…塞ぎ込んでばかりじゃ身体よくならないよ?」
ベッドに腰掛けて翔の顔を覗き込む。
翔「じゃあ…直ぐに気持ち切り替えろって?ここに居た赤ちゃんの事…忘れろって?」
「そんな事言ってないだろ?」
翔「じゃあどうしてそんな事言うの」
「俺はただ…翔に笑っていて欲しい。今は辛いかもしれないけど…お前がこうして毎日泣いてるの天国で見てたら…赤ちゃんどう思う?」
翔「………」
「おいで」
翔「ちょっ…潤!」
シーツを剥いで翔を姫抱きすると俺はそのまま病室を出た。
翔「潤止めて…降ろして」
「屋上行く?」
翔「………」
俺は翔を降ろさずに階段を上がって行く。
すれ違う人達が驚いた顔で俺達を見ていた。
翔「見られてる…お願いだから」
「駄目」
翔「………重いから」
「すげー軽いよ。痩せたろ」
翔「………」
そんなやり取りをしているといつの間にか屋上に辿り着いた。
屋上は広い休憩スペースになっていて、天気がいいせいか、何人かの患者さんとお見舞いの人達が談笑していた。
俺と翔は日当たりのいい場所に腰掛けた。
翔を膝に乗せたまま。
うつ向いたままの翔を俺はぎゅっと抱き締めた。