第56章 Struggle
本番が近付くにつれて…腹部の痛みは激しくなってきた。
顔色が悪いのだろう。
時々顔色を心配されて。
メイクさんに濃い目に塗って貰った。
村尾「櫻井さん大丈夫ですか?」
「大丈夫です。すみません」
そう返すしか出来なくて…そのまま生放送に入った。
ズクン…ズクン…
痛みに気を取られる。
自分の発言する場所でもワンテンポ遅れてしまう。
時折見せる村尾さんの心配そうな視線。
駄目だ…ちゃんとやらないと…。
そう思えば思う程…意識が少しずつ、離れていく…。
村尾「続いては櫻井キャスターのイチメンです」
「はい。今日は…」
立ち上がった瞬間だった。
グニャリと曲がる視界。
恐ろしい程の腹部の痛み。
バサバサと手から落ちる資料。
「あ、っっ…」
異変に気付いた村尾さんが咄嗟に俺を支える。
駆け寄って来るラルフさんが視界に入る。
「誰か救急車!CM差し込め!」
下半身が熱くなる。
激しくなる痛み。
村尾さんに支えられながら下に目をやると…おびただしい血…。
出血…した…?
ごめんなさい…赤ちゃん…。
俺はそのまま意識を飛ばした。