第56章 Struggle
ー翔sideー
打ち合わせをしていても…ちゃんと集中する事が出来なくて。
何度も聞き返したり、資料を読み直したり。
簡単に受け入れたくない。
せっかく授かったのに…。
もう失いたくない。
本当は分かってるんだ。
赤ちゃんは…天国に行ってしまった。
でも…受け入れたくない。
けれど…俺を抱き締めてくれた…潤の顔が浮かぶ。
やっぱり…病院に行かないといけない…かな…。
翔マネ「櫻井さん。そろそろ行きましょうか」
「あ、はい」
マネージャーに呼ばれ、顔を上げる。
翔マネ「身体は大丈夫ですか?」
「大丈夫。何とも…」
そう言って立ち上がると…腹部にズキン、と痛みが走る。
俺は思わずお腹を押さえた。
翔マネ「櫻井さん?」
「あ、いや…大丈夫…」
強い痛み…それは一瞬にして消えたけれど…。
静かな痛みが…同じ場所を襲い始めた。
翔マネ「櫻井さん?本当に?」
「平気だって。行こう」
これ位の痛みなら…耐えられる。
大した事ない…。
テーブルに広がる資料を掴み、俺は楽屋を出た。
心配そうに見つめるマネージャーに気付かない振りをしてそのまま報道局へと歩いて行った。