第55章 険しい道の始まり
帰りの車の中は特にこれと言った会話もなく。
俺達は昼過ぎには自宅へと辿り着いた。
ぼんやりとソファーに腰掛ける翔の隣に座ると翔が俺にもたれてくる。
翔「………ごめんね…」
「謝るなって…翔が悪い訳じゃない」
翔「………うん…」
「とにかくさ、可能性はゼロじゃない。長い道程になるかもしれないけど…無理せずに頑張ろう」
翔「出来なかったら…」
「出来なくてもいい。俺は翔と太陽が居れば…それでいいよ」
翔「潤…」
「な?母親が元気なかったら太陽が心配するよ?もうすぐ帰って来るし…」
翔「うん」
やっと…翔が少し微笑んだ。
「俺は…翔に笑ってて欲しい」
翔「………うん」
コクリと頷くと…翔が立ち上がる。
翔「よし!じゃあパワー付ける為に今日はご馳走作ろう!」
「うん」
キッチンに移動して冷蔵庫を漁る。
翔「………あった。よし、今日はトンカツにしよう」
「いいね」
翔「潤…お味噌汁作ってもらっていい?俺の大好きな…」
「油揚げと豆腐ね。了解」
翔「ありがと」
こうして俺達は…前向きに不妊治療に取り組もうと心に誓う事が出来た。
前向きにやっていこう。
前向きに…。