第55章 険しい道の始まり
「すみません…ごめんなさ…」
潤が優しく俺の背中をさすってくれる。
それでも…溢れる涙を止める事は出来なかった。
「分かってた…分かってたんですけど…ごめんなさい…」
医者「大丈夫です。泣きたい時は…思いきり泣いていいんですよ」
「はい…ぐすっ…」
医者「けれど…あくまで診断結果ですから。もっと悪い診断を下した患者さんが…ここで2人授かった事もありますから」
「………2人も…」
医者「はい。まずは…投薬で身体の状態をよく出来る様にしましょう。少しでも着床しやすい身体を作る様に。そして…奥さんの場合排卵も…上手くいってないみたいですから…定期的にしっかり排卵出来る様に。そこからやっていきましょう。焦らずに。お2人はお若いからまだ時間はあります」
「はい…頑張ります。ありがとう…ございます」
翔が涙を拭いながら力強く頷いた。
こうして…俺達の先の見えない長い戦いが始まった。
俺に出来る事は…ひとつだけ。
翔を支える事。
この腕に…子供を抱かせてあげたい。
俺の出来る精一杯で翔を支えよう。
そう誓った。