第55章 険しい道の始まり
検査から1週間後。
診察室で潤と並んで先生を待った。
結果は…何となく分かってる。
でも…これから突き付けられるかと思うと…怖くて。
隣の潤の手をしっかりと握った。
医者「お待たせしてすみません」
カルテを持った先生が診察室に入って来る。
カルテをデスクに広げながら…俺達の正面に座った。
医者「昨日はよく眠れましたか?」
「何とか…」
医者「そうですか。良かった」
明るく微笑みながら先生が頷いた。
医者「それでは…検査の結果です」
潤「はい」
医者「ご主人は…何の問題もありません。健康そのものです」
潤「そう、ですか…」
ご主人は…。
医者「奥さん」
「………はい」
医者「………検査の結果…こちらを見て頂きたいのですが」
先生が差し出されたカルテに目を落とす。
医者「こちらの数値が正常範囲をかなり下回ってます。そして…先週の触診と超音波検査の結果…腹部のこの部分。こちらがかなり通常より小さいんですね。そうすると…受精卵が着床しにくいんです。上手く着床しても…安定期までに胎盤ごと剥がれてしまう可能性が高いんです」
潤「じゃあ…やっぱり…」
医者「………言われていた…昔の…暴漢を受けられた時の影響でしょう。この状態は…妊娠や出産が…極めて難しいかと」
「………」
………二度目。
現実を…また突き付けられる。
命を失ったあの時…突きつけられた言葉。
俺は…何も言えずに涙を溢すしか無かった。