第55章 険しい道の始まり
医者「それでは…まずご結婚なされた日付をお願いします」
「2007年10月19日です」
医者「最後に…ご出産なされたのは?」
「2008年…4月18日」
医者「それでは…お伺いしますね。今まで…中絶や流産の経験は?」
翔「………中絶は…ありません。流産は…二度…」
医者「分かりました。流産されたのは…原因はお聞きしてますか?」
翔「それ、は…」
言葉に詰まる翔の手を握る。
「俺が話すから」
そう言うと…泣きそうな顔の翔が…コクリと頷いた。
「………息子が産まれて…1年程経った時に2人目を授かりました。けど…その時…翔…妻が………」
俺はゆっくりと息を吸った。
「………誘拐されて…そして…強姦…されました。それで…流産を…」
翔「………」
医者「そう…ですか」
「その時に…告げられました。今後妊娠は…難しいと。妊娠しても…育たないかもしれないと。確か…10パーセント程だと…」
医者「………話しにくい事を…お話し頂いてありがとうございます。分かりました」
翔が鼻を啜りながら頷いた。
医者「それでは…今のお話を参考に調べていきましょう。本日は奥様の方の触診と超音波検査…ご主人は精液検査をやりましょう。それとこれは義務として決まっているのですが…お2人の性病検査と…血液検査を行いたいと思いますが…よろしいですか?」
「はい」
医者「では…別々に検査しますので。奥様はこちらで。旦那様はあちらでお願いします」
「はい。じゃあ翔」
翔「うん…」
不安げな翔の頭を撫で、俺は翔と別れた。