第54章 決意を胸に
ポチャン…
プロポーズを決意したその日から、綾ちゃんの友達や綾ちゃんのお母さんに聞いて、沢山の店を周り、手を入れた婚約指輪。
今までの人生で最大の買い物だったそれは…いい音と共に波に飲まれていった。
「わ、わぁぁぁっっ!!指輪がぁっ!!」
俺は慌てて立ち上がり、指輪の落ちた場所へと飛び込んで行った。
綾香「ま、まー君!」
綾ちゃんが慌てて追い掛けて来る。
「指輪…指輪っ…!」
幸いな事に…浅瀬だったお陰で箱は直ぐに見つかった。
「良かったぁ…」
箱をしっかり握り締めながら振り返ると、綾ちゃんが俺を見て笑ってた。
綾香「………まー君…びしょ濡れ」
「え?あ…」
気付くと全身がずぶ濡れで…全身から海水が滴り落ちている。
「ごめん…もっと格好よく決めたかったんだけど…」
綾香「ううん。それがまー君だよ」
「綾ちゃん…」
綾香「ね。早く…言って?」
「うん」
咳払いをして、箱を開けて綾ちゃんに差し出す。
「星野綾香さん。結婚…して下さい」
綾香「………はい。宜しくお願いします」
ポロポロと綾ちゃんの瞳から涙が落ちる。
「綾ちゃん…良かったぁ!」
綾ちゃんがそのまま俺に抱き着いてくる。
「綾ちゃん濡れるよ?」
綾香「いいの…」
小柄なその身体を抱き締めながら俺達は口付けを交わした。