第54章 決意を胸に
ー雅紀sideー
夕暮れの海岸はまだポツポツと人がまばらで。
その中を俺達は手を繋いでゆっくりと波打ち際に添って歩いていた。
「もうすぐ帰んなきゃいけないのか…」
綾香「あっという間だったね…」
「うん…」
日本に帰れば…こんな風に手を繋いで歩く事もまた出来なくなる。
また忙しい日々が始まる。
隣で笑いながら話してる綾ちゃんの手を握る左手に力を込めると綾ちゃんがこちらを見つめて笑った。
右手をポケットに入れると…そこにはちゃんと、小さな箱が入ってる。
………よし。
相葉雅紀、決めます。
深呼吸をして俺は立ち止まった。
綾香「まー君?どうしたの?」
「あ、綾ちゃん…」
綾香「うん」
身体ごと綾ちゃんがこちらを向いた。
「………綾ちゃん!」
俺は片膝を着いて綾ちゃんを見上げた。
綾香「………え…」
俺がこれからしようとした事を感じ取ったのか、綾ちゃんが両手で口元を覆った。
よし、いけ相葉雅紀!
ポケットに手を突っ込み、勢いよく箱を取り出す。
「お、俺と…おわっ!」
勢いよく取り出した箱は、そのまま勢いよく俺の手をすり抜け、弧を描きながら飛んでいった。