第7章 想いの交差
ー潤sideー
リビングに戻るとシチューの良い匂いが鼻腔を刺激する。
翔「潤。もうすぐ出来るよ」
テーブルに料理を並べながら翔が微笑みかける。
「あ、うん」
少し後にお義父さんが戻って来た。
翔とお義父さんが顔を合わせるのは結婚の挨拶をしに来た日以来になる。
翔もお義父さんに似て頑固だ。
また喧嘩にならなければ…。
一瞬俺の中に緊張が走った。
翔「父さんお帰りなさい。お疲れ様」
俺に向けた物と変わらない笑顔で翔は微笑み掛ける。
翔父「ああ。翔も手伝ったのか?」
翔「ちょっとね。味は大丈夫だから安心して」
にこやかにキッチンへと戻って行った。
どうしたんだろ…。
考えていると翔がパタパタとキッチンから戻って来る。
「ん?ど、どうした?」
そのままの勢いで俺の腕を掴み、引っ張りながらリビングを出て行った。
「翔どうした?」
玄関まで引っ張られ、壁に押しやられる。
すると翔は、そのまま俺に抱き着いて来た。
「翔…?」
戸惑いながらも俺は翔を抱き締め返した。
翔「………ありがと潤…」
「え…」
翔「さっき…父さんと話してるの聞いた」
「あ…」
翔「父さんの本音聞けた…結婚も…やっと許して貰えた…潤…ありがとう…」
「いや…俺は当然の事しただけだよ。それに…完全に認めてもらえた訳じゃないからさ…本気を見せてみろって」
翔「それが認めたって事だよ。仕事始めた時俺にも言ったよ。『認めて貰いたいなら本気を見せろ』って」
「そう…なのか」
翔「やっと…正式に潤の奥さんになれる…」
「うん…松本翔…か…」
翔「………」
「………松本翔さん…」
翔「………」
「翔?」
無言の翔が気になって顔を覗き込んだ。
「翔…」
翔は…静かに涙を流していた。
翔「………名字が変わるだけなのに…こんなに幸せな事ってない…」
「………うん…」
翔「もっと…もっと頑張らなきゃ…奥さんになるんだからね…」
「頑張らなくていい。翔は俺の隣で笑ってくれてたらそれで俺は幸せだよ」
翔「潤…」
「ん?」
翔「どこまで俺を惚れされるつもりだよ。男前過ぎその発言」
「そう?」
翔「自覚ないかよ馬鹿…」
微笑みながら翔は俺にキスをした。