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君と僕の見ている風景【気象系BL小説】

第46章 母と呼ばれた日


車は…転んだままの俺達のほんの目の前でようやく止まった。


「と…智香ちゃん…怪我は…?」


俺の腕の中の智香ちゃんは震えながら頷く。


「よかった…」


回りの人達が駆け寄って来る。


「立てる?」


そう言うと智香ちゃんは無事にスッと立ち上がる。
それを見てようやく俺は胸を撫で下ろす事が出来た。


「いっ…!」


立ち上がろうとした時、お腹に痛みが走る。


「嘘…これって…」


転んだ時にお腹を強く打ったのかもしれない。


「智香ちゃんごめ…ちょっと…お腹痛いかも…」


智香「えっ…」


どんどん下腹部に広がっていく痛み。
これ…普通の痛みじゃない…。


「まさか…」


まだ2週間先なのに…。
智也と…同じ…?


でも智也の時とは違う…一気に痛みが強くなる。
智香ちゃんは戸惑いながら俺の顔を覗き込んでいた。


『大丈夫ですか!?』


親切な人達が駆け寄って来る。


「すみません…救急車…お願いします…お腹が…いっつ…」


『分かりました!』


携帯を取り出して電話を掛け始める。


智香「………やだ…やだお母さん!」


「え…?」


智香「お母さん!やだ!」


智香ちゃんが泣きながら俺にしがみついて来る。


今…何て…。


「智香ちゃん…」


智香「お母さん…お母さん…!」


「だ…大丈夫だよ…俺は平気。妹が…産まれるだけだから…智香ちゃんの妹…」


亜香里さんの事を思い出したのか…。
智香ちゃんの身体は震えてる。


「大丈夫…何処にも行かないから…ね?」


智香「うん…」


「………お母さんの側に居てくれる?赤ちゃん…産まれるまで…」


智香「うん。お母さんといっしょにいる」


頷く智香ちゃんを抱き締めながら…俺は遠くから聞こえるサイレンの音を聞いていた。
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