第46章 母と呼ばれた日
校長先生も小林先生も…相手の母親も…驚いた顔で俺を見ていた。
「この子を産んだ母親は…立派な人です。たった1人でこの子を育てた。誰の力も借りずに1人で。私は彼を尊敬しています。そんな立派な母親の血を引いたこの子は…とても素敵な子です。この子の母親は2人です!天国で見守ってくれてる芹澤亜香里と…この私です!」
校長「ま、まぁ落ち着いて…」
「片親だったから何ですか!両方揃っててもまともに育てられない親もいるでしょうが!」
母親「な、何よ…」
「智香は俺の命よりも大切な娘です。今度悪く言ったら…許しません!」
小林「………」
校長室に静けさが戻る。
隣で智香ちゃんは黙って俺を見つめていた。
母親が何か言い掛けたその時…入口の扉が鳴る。
小林先生が慌てて開けた。
小林「お前達…今忙しいから教室に戻りなさい」
『せんせい!だってともかちゃんわるくないから!』
小林「え…?」
すると小林先生を押し退けて数人の女の子達が入って来る。
智香「みんな…」
女の子1「こうちょうせんせい!ともかちゃんはわるくないです!悪いのはみきちゃんです!」
みき「!!」
小林「どういう事だ?」
女の子2「ともかちゃん…ずっと『あいじんのこ』ってからかわれたの!ずっとずっとがまんしてた。でもきょう…『あんたのおやはげいのうじんだからすぐりこんする』って。『あいのないけっこんだってわたしのママがいってたもん』っていわれたからともかがおしたの!さいしょにひどいことしたのはみきちゃんだよ!ううん…ずっとまえからひどいことしてたんだから!」
母親「みっ…みき…!」
みき「だ、だって…ママがいつもいってたもん!」
母親「ちょっ、みき!」
小林「どうやら…謝るべきなのはそちらですね」
小林先生の目が光る。
智香ちゃん…。
込み上げてくるものを抑えながら…俺は真っ直ぐに相手の母親を見つめた。