第45章 心の傷
ー智sideー
「智香入るぞ?」
ノックをしても返事はない。
ドアを開けると智香はベッドに横になりグズグズ泣いていた。
「話しよう」
学習机の椅子をベッド横に置いて座る。
智香は何も言わずに身体を起こす。
「これおにぎり。夕飯来なかったからお腹空いたろ?お母さんが握ってくれた」
智香「………」
黙ったままラップにくるまれたおにぎりを受け取る。
「叩いてごめんな。ちょっと怒り過ぎた」
智香「………」
「智香あのな…お前にまだ言うつもりはなかった。傷付けたくなかったから。でも誤解して欲しくないからちゃんと話すよ。パパとママと…お母さんの事」
智香「………」
「パパな…お母さんと出会うまで…その…色んな人と遊んでた。沢山遊んで…また別の人って…。酷い事沢山してた。お母さんと出逢っても遊んでたんだ。そんな時…お前のママ…亜香里と出逢ったんだよ。いい子だったよ…本当に。優しくて我慢強くて…何よりこんなおいらを好きになってくれて…」
智香「………ママのこと…きらいだったの?」
「好きだったよ。嘘じゃない。亜香里だったらずっと一緒に居れると思ってた。でも…上手くいかなかった。お母さんの事忘れられなくて…それで…パパはお母さんを選んだんだ」
智香「………」
「かずは…亜香里の事何も知らなかったんだ。だから2人の事知った時は凄くショックだったし…お別れしようとも思った。でも出来なかった。それ位…おいらはあの人を…好きなんだ。亜香里は悪くない。かずも悪くない。だから…悪いのはパパだ」
智香「………ママより…あのひとのこと…すきだったの?」
「ごめんな。そのせいで智香の事もずっと知らずにいた。でもかずは…智香の事大好きだって…言ってたぞ。それに亜香里の事も大好きだったんだ。お前の事沢山亜香里に聞いてた。好きな食べ物、嫌いな食べ物。好きなテレビ番組とか…全部ノートに書いてる。智香と少しでも早く仲良くしたいから。うめおかかのおにぎりも…ママがかずに伝えてたんだぞ?」
智香「ママが…」
「そう。だから…食べて欲しいな」
そっと頭を撫でると…智香がゆっくりとラップを外し、ゆっくりと口に運んだ。