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君と僕の見ている風景【気象系BL小説】

第45章 心の傷


ー和也sideー


散々だった昨日の夜。
分かってはいたけど…面と向かって『大嫌い』なんて言われるとさすがに心が折れる。


亜香里さんに聞いた智香ちゃんの好きなおにぎりを作るだけで精一杯で…話すのをさとしに任せてしまった。


今日も目の前で智香ちゃんは黙ってご飯を食べている。
俺も…また拒絶されるのが怖くて何も言えずにいた。


智香「ごちそうさま」


手を合わせて頭を下げ、椅子を降りる。
ランドセルを背負って玄関に向かう智香ちゃんを慌てて追い掛けた。


「智香ちゃん忘れ物ない?」


振り向かずに智香ちゃんは頷いた。


「い、いってらっしゃい。気を付けてね?」


智香「………」


智香ちゃんがドアノブに手を掛け…動かなくなる。


「………智香ちゃんどうしたの?忘れ物?」


智香「………は………さい」


ボソボソと声が聞こえる。


「ん…?何?」


一歩智香ちゃんに近付くと…智香ちゃんは振り向いて…俺を見つめた。


「………智香ちゃん…?」


智香「………きのうはごめんなさい」


「え…」


智香「………ごめんなさい…」


「そ、そんな…。俺が悪かったんだよ。智香ちゃんは謝らないでね?」


智香「おにぎり…おいしかったです」


そして駆け出す様に扉を開けて出て行った。


「い…いってらっしゃい!」


智香ちゃんは振り向かなかったけど…その姿が見えなくなるまで手を振った。


智「ふわぁ…おはよぉ…智香学校行ったのかぁ?」


そのタイミングで激しい寝癖のさとしが目を擦りながら寝室から出て来る。


「さとしっ!」


智「うぉっ!」


喜びのあまり俺はさとしに駆け寄り飛び付いた。
慌ててさとしが抱き締める。


智「どうした?」


「………一歩…近付いたみたい」


智「………そっかぁ」


直ぐに察したさとしは嬉しそうに微笑む。


「ありがとさとし」


智「おいら何もしてねぇよ」


「ふふっ。さとし抱っこ♪」


智「おっ、重い重い!お前何キロ増えたんだっ」


「失礼だなぁ誰のせいだよ…ほら歩けっ!」


智「暴れるな落とすって!」


ひぃひぃ言いながら俺をリビングまで運ぶさとしが面白かった。


ありがとねさとし。
愛してるよ。


出産まで…後わずか。
俺の中の不安が少し掻き消された気がしていた。
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