第45章 心の傷
ー智sideー
「ただいまー…」
玄関に入ると笑顔のかずが出迎えてくれる。
和「お帰りなさい」
「んー。ただいま」
和「ご飯食べる?」
「うん」
和「じゃあ準備するからお風呂入って来てね。パジャマも置いてるから」
「おー。サンキュ」
おいらの鞄を受け取ったかずがリビングに戻るのを見てからおいらはそのまま風呂場へと入った。
リビングに入るといい匂いが漂ってくる。
その香りに誘導されておいらのお腹が鳴った。
和「お腹空いてた?」
「ペコペコ」
そう言いながら椅子に腰掛けるといいタイミングで料理が並べられた。
おいらの好きな生姜焼きだった。
「いただきます」
一口食べ、ビールを流し込む。
「はぁー…うま」
相変わらず起用なかずの手料理は絶品で幸せな気分になる。
かずが微笑みながら向かい側に座った。
「子供達は?寝たのか?」
和「もう寝たよ」
「そっか。翔くん来てたんだろ?どうだった?」
和「太陽くんが人見知りしないからさ…直ぐに智香ちゃんと仲良くなったよ。3人でずっと遊んでた」
「そっか。良かった」
和「子供達…もうすぐ3人になったら賑やかだろうな…」
かずが呟きながら嬉しそうにお腹を撫でる。
「………子供…達…」
和「何?」
「いや…複数形って…智香も入ってるんだなって思うと嬉しくてさ…」
和「当たり前じゃん。智香ちゃんは俺の娘だよ。亜香里さんの娘でもあるけれど俺の娘でもあるんだ」
「かず…」
和「俺…ちゃんと母親やれてるかな…」
ぽつりと呟きながら…かずが心配そうにうつ向いた。
和「智香ちゃんに嫌われてるのはよく分かってる。でも俺は…智香ちゃん大好きだよ。亜香里さんに似て…強い子だよ。それに優しい。智也もこの子も…お姉ちゃんみたいな子になればって思ってる」
「………」
おいらは立ち上がり、かずを後ろから抱き締めた。
「お前を嫌ってなんかいないよ。今は亜香里が死んで辛いだけだ。きっと乗り越えられる。だからそれまで見守ろう」
和「うん」
「愛してる。本当にありがとう」
和「さと…」
そっと手を伸ばし、かずを振り向かせキスをした。