第45章 心の傷
和「さとし。智香ちゃんは?」
「ん?何か食欲無いって…少し疲れてるみたいだ」
和「そっか…コロッケ好きだって聞いたから作ったんだけど…」
残念そうにかずは智香の皿を片付ける。
「お腹空いたら来るかもよ。明日でもいいしさ」
和「うん。そうだね」
かずがお皿にラップをかけて冷蔵庫に片付ける。
和「さ、食べようか」
「うん」
智也「まんまー」
「ともお腹空いたねー。お待たせ」
智也にご飯を食べさせながらかずは自分の食事を取る。
「かず俺やろうか?」
和「大丈夫だよ。あ…洗い物だけお願いしていいかな?お腹がシンクに当たってやり辛くて」
「もちろん」
和「食べたら智香ちゃんにおにぎり持って行こうかな。お腹空いたら食べたいだろうから」
「そうだな。ありがとう」
和「ありがとうなんて…。智香ちゃんは俺の娘だよ。当たり前の事だし」
「………うん」
にっこり微笑むかずが愛しくて…そして申し訳ない気持ちになった。
おいらは…思ってる以上に重い責任を…かずに押し付けてしまったんじゃないかと…。
直ぐに打ち解けられるなんて思ってなかったけれど。
おいらが居ればどうにかなるって…心の奥底で…軽く考えてたのかもしれない。
でも…10年間2人だけで手を取り合い生きてきた…親子の絆は…きっと深く…深く…智香の心に傷を残してる。
『一緒に乗り越えよう』
そのかずの言葉においらは甘えてる。
智香とかずが一緒に居る事で…智香の事もかずの事も傷付けてしまうのではないか…。
けれどもう…後戻りは出来ない。するつもりもない。
けれど…それだけの重荷を背負わせた妻であるかずの事を思うと…酷く胸が痛んでいた。