第44章 亜香里の想いと和也の決意
スヤスヤと眠る智香ちゃんをさとしは隣の簡易ベッドへと寝かせた。
智「亜香里。また明日来るから。ゆっくり休めよ」
亜香里「うん。ありがと」
「じゃあまた明日ね」
亜香里「毎日ごめんね…」
「産休で暇だからいいんだよ。気にしないで?」
さとしに支えられソファーから起き上がると亜香里さんが声を掛ける。
亜香里「2人に渡したい物があるんだ…」
智「渡したい物?」
亜香里「うん…。そこの2番目の引き出し」
亜香里さんが指差した場所を開くと、そこにはハンカチにくるまれた…通帳と印鑑が入っている。
智「亜香里…これ…」
亜香里「それ…持っていって…」
「え…」
見るとそれは…智香ちゃんの名義の通帳。
開くと…毎月1回ずつお金が振り込まれていた。
亜香里「智香が産まれてから…毎月貯めてたんだ。いつか…智香がお嫁に行く時恥ずかしくない様にって…。少しずつだったから…それだけしか貯まらなかったけど。まさかその前に死ぬなんて思わないからさ…」
「亜香里さん…」
亜香里「それ使って…?」
智「………」
亜香里「子供はお金が掛かるし…それだけしかないけど…」
そんな大切なお金…使える訳ない…。
智「………分かった」
「さとし…」
智「このお金は…智香がお嫁に行く時に…俺達からちゃんと渡す。亜香里が蓄えたお金だって。その為のお金だ」
亜香里「智…でも…」
智「これからのお金は気にするな。おいらとかずで…ちゃんと育てるって決めたんだから。お前は…見ててくれ。智香の幸せを」
亜香里「………智…」
「そうだよ。責任持ってお金はその日に渡すから。大丈夫」
亜香里「………ありがと…」
亜香里さんの瞳から一筋涙が溢れた。
亜香里「智香の事…宜しくお願いします…」
泣きながら頭を下げる亜香里さんの手を俺とさとしはずっと握っていた。