第44章 亜香里の想いと和也の決意
亜香里「智香の事だけじゃなくて…俺にまでこんな事…」
「………」
亜香里「どうして…?どうしてそんなに優しく出来るの…?」
「うーん…化けて出られると困るからかな」
亜香里「………化けて?」
「ふふっ。嘘だよ」
亜香里「ぷっ…もう…」
クスリと笑う亜香里さんの手を握った。
「貴方が嫌な人なら…こうならなかったと思う。俺も…きっとさとしも。でも…貴方だから…そうしたいって思ったんだ。智香ちゃんも…亜香里さんの子供だから…俺が育てるって決めたんだ」
亜香里「勝手に…産んだのに…」
「まだ16歳の貴方が1人で産んで10年も育てるなんて…簡単には出来ないよ。それだけさとしの事愛してるって事だよね。今でも…」
亜香里「うん…。愛してる。ごめん」
「………」
亜香里「初めて会った日から…今でも…ずっと愛してる。何でだろうね。あんなに振り回されてたのに。酷いこと…沢山された」
「酷いこと?」
亜香里「うん。デートのドタキャンなんてしょっちゅうだし…会っても…セックスしたらすぐ帰されたりとかしてたんだよね…」
「本当…?最低だねそれは」
亜香里「ふふっ。でしょ?何であんな奴…好きになったんだろう…」
「俺も…何で離婚出来なかったのかな…」
話しながら…智香ちゃんと戯れるさとしを見つめる。
「………馬鹿な男だけど…でもやっぱり…好きなんだよね…大野智が…それだけの魅力を…あの人は持ってるんだよね」
亜香里「そうなんだよね…自覚ないだけに…タチが悪くて…」
2人で笑いながらぽつりと呟く。
亜香里「でも…和也さんが居なかったら…智は愛を知らずにろくでもない人間のままきっと独りで死んでいってたよ」
「そうかな…」
亜香里「そうだよ。だからさ…アホな人だけど…お世話してあげて?」
「そうだね…仕方ないね」
俺達はいつまでもさとしを見ながら手を握っていた。