第44章 亜香里の想いと和也の決意
智「かず…かずっ」
まるで尻尾を振った仔犬の様に俺に抱き着いてくるさとし。
でも凄く…嬉しい…。
きっと…本当の亜香里を知らないままでも…俺はさとしと離婚してなかっただろうな…。
だって結局…俺が離れられないんだから…。
するとさとしの手が俺のシャツに滑り込んで来る。
「さ、さとし…!」
智「いいじゃんかず」
「だ、駄目ってちょっ…」
首筋に吸い付かれ、痕を付けられる。
智「我慢出来ないから…」
「き、今日は駄目…」
そう言ってもさとしの手は止まらない。
「き、今日は亜香里さんの話しなきゃ!」
するとようやくさとしの手が止まった。
智「亜香里の…?」
「そうだよ。俺このままでいいのかなって…」
智「おいらも…そう思ってるよ」
さとしが起き上がり、俺の隣に腰掛ける。
智「出来るだけの事…したかったのにな。断られるなんて…」
「………治療する事になると…智香ちゃんと一緒に居られる時間も限られてくる…。それに…治療しても命が長引くだけ…それより智香ちゃんと一緒にいたい…」
亜香里さんの言葉を思い出す。
智「それならそれで…側に居れる方法…考えなきゃな…」
「うん」
智「きっとあるよ。亜香里の為に出来る事。考えるから」
俺は頷きながらさとしの胸に顔を埋めた。