第44章 亜香里の想いと和也の決意
ー和也sideー
智「智香寝たよ」
「本当?」
寝室から智香ちゃんを寝かし付けたさとしがリビングに戻って来る。
智「智也もお姉ちゃんが好きみたいだ」
「そのまま仲良くしてくれたらいいな。この子も…」
お腹に手を当てると智もそっと手を添えた。
智「きっと…仲良くなれるよ」
「うん」
智「あのさ…かず…」
「ん?」
顔を上げるとさとしが俺の両手を握る。
「………何?」
智「………ちゃんと…言ってなかったけど…」
「………うん…」
何となく…さとしが言おうとしてる事が想像出来た。
智「………今回の事は…本当にごめん。何度謝っても足りないと思ってる。亜香里の事も…智香の事も…」
「………」
智「………でもかずが…智香を引き受けてくれる覚悟…決めてくれて…本当に…嬉しかった。普通じゃ出来ない決断…してくれて…お前の事…本当に…凄いって思った。正直…惚れ直したっつーか…」
「………」
智「………おいら達も…もう一度…夫婦やり直せるか?3人の子供達と…おいら達夫婦で…ここで一緒に過ごせたら…おいら…嬉しいと思ってる…だから…自分勝手だって分かってるけど…」
「………」
智「………もう一度…やり直して…下さい…」
手を握ったまま…さとしが頭を下げた。
「………さとし。顔…上げて」
そう言うと…さとしの顔がゆっくりと上がる。
「智香ちゃんの事…引き受けたけど…でもこの事は…夫婦でいる限り…一生付き合ってかなきゃならない問題だと思う…」
智「………うん…」
「そこの鞄に離婚届入ってるから…とってくれる?」
智「………はい」
さとしが手を伸ばし、離婚届を取り出した。
それを受け取り広げた。
智「………」
「………」
そして俺は…一気にその紙をビリビリに引き裂いた。
智「かず…」
「一緒に頑張るから。乗り越えていこう?」
智「かずっ…!」
さとしがそのまま俺を抱き締めてきた。
智「ありがとう…本当に…ありがとう…」
涙声で何度も言うさとしの背中に俺はそっと手を回した。