第2章 何気ない日常の中で
ー潤sideー
朝食の後、俺は部屋の片付け。
翔くんは新聞に目を落とす。
俺達の毎日の光景だった。
「翔コーヒーいる?」
翔「うん」
柔らかい笑顔を俺に向けると直ぐにまた新聞に目を落とす。
この風景って…まるで夫婦みたいだな。
ふとそんな事が頭を過り、1人でにやついてしまう。
考えない訳じゃない。
付き合い始めてもう…7年か。
普通のカップルだったら考えないといけない期間だよな。
でも…俺達は普通のカップルじゃない。
表向きは恋愛禁止のアイドル。
しかも同じグループ。
バレたらマスコミの格好の餌食。
今だってバレない様に最善の注意を払いながら付き合ってる。
でも正直そんな毎日にも疲れた。
もっと堂々としたい。
手を繋いで歩きたい。毎日一緒に眠りたい。
どうすれば…事務所に認めてもらえるのか。
翔「潤…潤」
「ん、え?な、何?」
翔「………何考えてるの」
「いや…別に」
とぼけた振りをすると翔が俺の手元を指差した。
翔「同じとこ何度も拭いてる。考え事したり煮詰まったりした時の潤の癖」
見透かされてる。
「………ちょっと…ね」
翔「話してよ」
新聞を置いて翔が真っ直ぐに俺を見つめる。
「考えてた…俺達の事…」
翔「俺達の…何?」
「将来…」
翔「………結婚?」
「ん…」
俺は大きく頷いて翔の隣に腰掛けた。
翔「結婚したいの?」
「そりゃそうだよ!俺は…翔と結婚したい。翔じゃなきゃ嫌だ。じゃなきゃ7年も付き合ったりしない」
翔「潤…」
「前に…プロポーズした時は断られたよね。『早過ぎる』って…確かにそうだったよ。でも…もう7年だよ。俺もう10代じゃないし…」
翔「………」
「翔は…翔はどう思ってる?」
翔「………」
「俺と…結婚…少しは考えてる?」
恐る恐る尋ねると、暫く押し黙った後、翔が口を開いた。
翔「………結婚、したい…」