第44章 亜香里の想いと和也の決意
ー和也sideー
智香「ママ…ママっ!」
亜香里「智香っ…!」
数ヵ月振りの再会に親子は涙を流して抱き合った。
その様子を俺とさとしは…病室で2人を静かに見つめていた。
亜香里「ごめんね智香…許して…」
智香「ママぁっ…」
あの日から数日。
俺達は智香ちゃんを連れて病院へとやって来た。
。
2人の事。
事務所には散々怒られた。
智香ちゃんの事…大反対された。
引退する覚悟で…俺はお願いした。
俺達のマネージャーの必死の説得もあり…ジャニーさんとジュリーさんは許してくれた。
亜香里さんが亡くなるまでは…公表しないとの約束で。
家族も…反対してた。
特に俺の両親。
でも…さとしは皆の前で…ずっと土下座してくれた。
『申し訳ありません』
何度も言ってた。
無理矢理捩じ伏せた形だったけど…納得を得られて嬉しかった。
皆ありがとう。
俺のワガママを聞いてくれて。
亜香里「会いたかった…智香…」
そう涙を流す亜香里さんは…俺や翔さんと同じ…母親の顔をしてた。
智「亜香里。ちょっと提案があるんだ」
亜香里「話…?」
智「昨日かずと話したんだ。お前の事…。あのさ…病院…移らないか?」
亜香里「………」
「一日でも長く智香ちゃんと居られる様に…もっと技術の高い病院に移ったらどうかって。勿論…お金の事は気にしなくていいから」
亜香里「………」
「智香ちゃんの為にさ」
そう言うと亜香里さんは…優しく微笑みながら首を横に振った。
亜香里「ありがとう。でも…俺はいい」
智「亜香里。どうして…」
亜香里「また智香と一緒に居られるんなら…治療に専念するんじゃなくて一日一日ゆっくり智香と過ごしたい。限られた時間で…娘と出来るだけ一緒に話したい」
「………亜香里さん…」
亜香里「ありがとう。でも俺は…大丈夫だから」
優しい笑顔の亜香里さんを前に…俺達はもう何も言えなかった。