第44章 亜香里の想いと和也の決意
ー智sideー
亜香里「………胃癌なんだ。スキルス性の胃癌」
亜香里の口から語られたのは…衝撃の言葉だった。
亜香里が話している間…かずは亜香里に寄り添う様にずっと手を握って聞いていた。
「スキルス性胃癌って…」
詳しくは分からないけど…確か発見が遅くて…進行が早い癌だって…。
亜香里「俺…後1ヶ月位らしいんだ…」
和「そんな…」
亜香里「………分かった時…絶望した。まさか自分が癌になるなんて…。智香…まだ10歳なのに…」
「………」
亜香里「智香を妊娠した時…『途方にくれた』なんて言ったけど…本当は嬉しかった。だって…世界中で1番好きな人の子供だよ?きっとこれは…神様が俺に捧げてくれたんだって思った。だから迷いなんてなかった。この子を…この子の為ならどんな辛い事も全て幸せに出来るって。だから…何がなんでも産むって」
和「………」
「この10年…楽しかった。智香と2人の生活がこんなに幸せだなんて。本当に…産んで良かった…ぐすっ…」
和「………亜香里さん…」
亜香里「………二宮さん…ごめんなさい。酷い事沢山言って傷付けた。でも…俺…智香の事一生言うつもりなかった。信じて下さい…」
和「………信じるよ」
かずは優しく微笑みながら…亜香里の手を握り続けた。
「………おいらに面倒見ろなんて言ったのは…智香を独りにしたくなかったから、か…?」
涙を擦りながら…亜香里は深く頷く。
亜香里「智香には…家族の居ない人生を送って欲しくなかった。独りぼっちの辛さ…俺は痛い程知ってる。孤独な俺に家族を与えてくれたのは…智香自身だったから…」