第43章 divorce
智「ただいま…」
「お帰りなさい」
玄関でさとしを迎えると…凄く嬉しそうに俺を見つめた。
「何」
智「その言葉…久し振りに聞くから」
そう言って俺を抱き締めてくる。
「………智香ちゃんの風邪が治るまでだよ」
智「………分かってる。本当…ありがとう」
「ただの風邪でよかったね」
智「うん。智香は?」
「さっきご飯食べたよ。お粥と身体に優しいおかずを少しね。様子見てきたら?ご飯用意してるから」
智「うん。本当にありがとう」
「ん…もう」
ちゅっと唇にキスが落とされた後、さとしは智香ちゃんの部屋に入って行った。
智「はぁー…美味い…」
夕飯を食べながらさとしは幸せそうにため息を付いた。
「いつもと変わらないでしょ」
智「最近食べてなかったからさ。かずの料理」
「そうだね…」
智「暫くは…いてくれるんだよな…」
「風邪が治るまで」
智「ありがとう…迷惑掛けて…」
「………子供に罪はないよ。それは分かってる」
智「それでも…ありがとう」
「………うん」
にっこりと微笑むさとしに俺も微笑み返した。
悔しい…悔しいけどこの場所が…さとしと居るこの空間が…凄く幸せに感じた。
しっくりくる…。
分かってるんだそんな事。
だから…離婚届を出せずにいる。
逢えば…身体を重ねてしまう。
智「もうすぐ…6ヶ月か」
さとしが愛しそうに俺のお腹を見つめる。
智「次の検診で…そろそろ分かるんじゃないか?性別」
「そうだね…分かるといいな」
智「智也みたいに元気な子…産んでくれな」
「うん」
俺達は手を繋ぎ、微笑み合った。
久し振りの我が家での2人の夜は…睡眠を忘れる程遅くまで語り合ってしまう程だった。