第43章 divorce
ぽつんと取り残された様に…智香は亜香里が出て行った玄関先を見つめていた。
泣き叫ぶかと思ったけれど…ただ静かに、そこに立っていた。
「智香」
智香「………はい」
「お腹空いてないか?ホットケーキあるからさ…一緒に焼く?」
智香「食べたい」
「よし。じゃあおいで」
小さな手を引いてキッチンへと移動した。
「えーと卵と牛乳と…あったあった」
冷蔵庫を開けて準備してると智香に服の裾を引っ張られる。
智香「パパ」
「ん?どうした?」
智香「あの…」
「ん?」
智香「………」
智香は誰かを探すようにキョロキョロと辺りを見回している。
「………智也か?」
するとコクンと頷いた。
「あー…聞いてくれるか智香」
材料をテーブルに並べ、中腰になり智香の両手を握る。
「あのな…智也は…もうここでは暮らさないんだ」
智香「え…」
「………智也のママ…おいらの奥さんと…別々に暮らす事になった。でも…智也とは時々会える様にしてもらうからさ。智香…パパと2人で暮らそう」
智香「2人?」
「うん。おいらお仕事あるからさ…居ない時はおいらのお父さんとお母さんがここに来てくれるから。智香のお祖父ちゃんとお祖母ちゃんだ」
智香「おじいちゃんとおばあちゃん…?」
「うん。智香に会いたいって言ってる。きっと仲良く出来るよ」
智香「うん」
笑顔で頷く智香の頭を撫でながら…おいらはホットケーキの準備をした。
そうだよな…。
亜香里は兄弟や両親が居ないから…2人だけで生きてきたんだ。
だから智香は…それが嬉しいんだろな。
弟や…お祖父ちゃんお祖母ちゃんていう存在が…。
寂しい思い…させない様に努力しないと…。
そう誓いながらおいらはこの日から娘との2人での生活をスタートさせたのだった。