第43章 divorce
ー智sideー
「………いらっしゃい」
亜香里「………お邪魔します…」
大きなスーツケースを持った亜香里が智香を連れて入って来る。
「おはよう智香」
智香「おはようございますパパ」
亜香里「………あの人は?」
「………出て行ったよ。おいら達…別れる事になったから」
亜香里「………そう。悪い事しちゃったね」
「………」
亜香里「智」
そう言うと…亜香里が振り返りおいらの首に手を絡ませて来る。
亜香里「だったらやり直さない?俺達」
「何言ってんだ。子供の前で」
亜香里「駄目…?」
そしてゆっくりと顔が近付き、唇が重なった。
何も抵抗せずに立ってると直ぐに亜香里が離れる。
亜香里「………冗談だよ。そんな顔しなくても」
「………亜香里」
「何?」
「お前には悪い事したと思ってる。おいらに償える事は…何でもしたい。ただこれだけは言っておく。かずは関係ない。おいらがお前達を振り回したんだ。だから…もう会う事は無いと思うけど…かずにあんな口聞くのは止めてくれ。頼む。憎むなら…おいらを憎め」
亜香里「………」
「おいらのせいなんだから」
亜香里「………愛されてるね。あの人」
「………愛してるよ。別れても…一生あいつだけだ」
亜香里「あんなに食い散らかしてた智がね…。今じゃテレビ画面からでも分かるもん。本当に愛してるんだなって…本当…悔しかった」
「………」
亜香里「もし会っても…あんな口聞かないよ」
「ありがとう」
亜香里「じゃあ俺行くから。宜しくお願いします」
「え?もう行くのか?」
亜香里「うん。智香じゃあね。パパの言う事ちゃんと聞くんだよ」
智香「ママ…」
亜香里「バイバイ」
「ちょっと待てよ。そんな別れ方…」
亜香里「さよなら」
おいらが制止するのも聞かずに亜香里は…智香の頭を撫でただけで、足早に出て行ってしまった。
そして我が家には…俺と…娘・智香が取り残されたのだった。