第41章 Past surging
眠っているかずにそっとキスをして…おいらは寝室を出る。
夜明けが近いこの時間…おいらは一睡も出来なかった。
上着のポケットから帰りに何年振りかにコンビニで買った煙草を取り出して火を付ける。
そのままベランダに出て煙を吐き出した。
「………不味い…」
脳裏から離れない…亜香里と…あの少女の表情。
智香…。
【智】と亜香里の【香】…智香…。
「………智香…」
亜香里によく似た顔。
そして亜香里と同じ様に…大人しい子だった。
「何で今更…」
智『………何言ってんだよ…お前…『引き取れ』?』
亜香里『………』
智『捨てんのか…子供を』
亜香里『………捨てるんじゃないよ。こうやって父親に預けてるんじゃない』
智『10年育ててきたんだろ。なのに何でだよ。亜香里…お前何を…』
亜香里『結婚するんだ』
智『………え…?』
亜香里『………結婚…するんだ』
智『結婚…?』
亜香里『………だから邪魔なの』
智『お前…子供の前で何て事…』
呆然とするおいらの前で…智香ちゃんは黙ってうつ向いていた。
亜香里『智に責められる筋合いはないよ。そうでしょ』
『………』
亜香里『智。俺…幸せになりたい。だからお願い。智香の事お願いします』
『待って…今この子の事聞かされて…即答は…』
亜香里『DNA検査しても構わない。この子は貴方の子供です。だからお願いします』
「………」
また会うと約束をして…おいらはその場を去った。
智香…。
智也の…お姉ちゃん…。
かずに言わないといけない。
でも…どう言えばいい?
聞いたらかずは…かずは…。
ぐしゃぐしゃと頭を掻きながら…おいらはずっと…深い深い闇を…さ迷っていた。