第41章 Past surging
ー智sideー
亜香里と会ったのは…国立ライブの終わった翌日だった。
かずには『画材を買いに行く』と言って家を出て来た。
待ち合わせの場所は…昔亜香里と何度か来た事のある喫茶店。
亜香里がそこのカルボナーラが好きだと言っていた。
昔と変わらない外観の扉を開くと…内装も変わらないままだった。
「いらっしゃいませ」
マスターを声を背においらは辺りを見渡した。
1番奥の見えにく席に座っていた亜香里がこちらに向かって手を振った。
おいらはスッと手を上げ、急いでそこへと向かった。
「え…」
席の前で一瞬立ち止まる。
亜香里の隣には…小学生位の女の子が座っていた。
少女「こんにちは」
「あ…えっと…こんにちは」
頭を下げて向かい側に腰掛ける。
その女の子は…ジッとおいらの顔を見ていた。
知ってんのかなぁ…おいらの事…。
亜香里「突然ごめんなさい」
「あ…うん…。この子は…」
すると亜香里は大きく息を吸い込んでゆっくりと口を開いた。
亜香里「………娘です」
「は!?娘…?」
亜香里「………智香って言います。10歳に…なります」
「………10歳…。え…10歳って…」
おいらの視界がグラグラ揺れる。
「………ちょっと待て…。おいらの思い違いじゃなければいいけど…その…その子…」
亜香里「………貴方の娘です」
「………」
言葉を失った俺を…その少女はいつまでも見続けていた…。