第39章 雅紀の決意
ー雅紀sideー
「綾ちゃんちょっといい?」
綾香「うん」
夕食を終えたリビングでコーヒーを入れてくれてる綾ちゃんに声を掛けた。
綾香「どうしたの?」
隣に腰掛ける綾ちゃんを見つめながら…俺は姿勢を正した。
「うん。あのさ…」
綾香「うん」
「ここ引っ越さない?」
綾香「え?」
きょとんと目を丸くする綾ちゃんの手を俺は握った。
「前からの事だけどさ…週刊誌に載ってから余計にファンの子達がここに集まって来てるじゃん。それに駐車場まで記者が入って来る位だし…もっとセキュリティの高いとこ移ろう?事務所に話したら…ひとついい物件があるって」
綾香「そっか…。いいよ。まー君に任せる」
「じゃあ今度見に行こう?」
綾香「うん」
「でさ…その…そこのマンション…綾香ちゃんの職場から少し離れてんだよね」
綾香「そうなの?」
「うん。だからこの際さ…いい機会だから仕事止めたらどうかなって。結婚するんだし…それがいいと思うんだ」
意を決して綾ちゃんに伝えた。
そう…綾ちゃんの為にも仕事は…止めて欲しい。
でも綾ちゃんは…握られた手をすっと離した。
綾香「この際…?どの際?」
「え…」
綾香「私に家庭に入れって事?それは命令?」
「あ、いや違うよ…」
綾香「仕事止めるかどうか決めるのは私でしょ?まー君には関係ない」
「綾ちゃん違うよ…俺は…」
綾香「まー君がそんな考え方だなんて思わなかった。そういう風に思ってるなら…結婚考え直した方がいいのかも」
「え?」
綾香「………お休みなさい」
「あ、綾ちゃん!」
寝室に向かう綾ちゃんの背中を俺は慌てて追い掛けた。