第34章 魅惑の薬
翔「………」
和「………」
シンと静まり返ったリビングで…俺とりーだーは泣きながら事切れた翔とにのを抱き締めていた。
「翔…翔っっ!!目を覚ませよ!!翔!!」
智「かずっ!!嘘だっっ…!!」
必死で人工呼吸をするも…全く効果は無く、翔とにのの身体はパタリと力無く俺達の腕の中に収まっていた。
「何なんだよ…何なんだよこの薬!!」
智「………毒なのか…?」
「ふざけんな!!作った奴殺してやる!!」
智「っっ…かず…」
ぼろぼろと泣きながらりーだーはにのをぎゅっと抱き締めた。
「………あ…。救急車…救急車…!!」
そうだ…。
まず救急車呼ばないと!!
俺は携帯を取り震える手で画面を開く。
「救急車…何番?救急車…」
もう訳が分からない。
何で…。
さっきまで普段通りに笑ってたのに…。
翔…翔…!!
智「え…!?えええ何だ!?」
「え…?」
りーだーの声に振り返ると…にのの身体から…煙が上がり始める。
それは…翔からも発生していた。
「翔!!何だよこれは!!」
智「分かんねぇよおいらに聞くな!!」
ピンク色のその煙は…どんどん翔とにのの身体から部屋に充満していた。
「翔ーっっ!!」
智「かずっっ!!」
ただ俺達は…目の前の妻の身体を抱き締める事しか出来なかった。
「止めろーっっ!!」
智「かずーっっ!!」
ぽんっっ!!
「………へ?」
まるで…空気が抜けた様なその音。
智「な…に?」
顔を上げると…いつの間にか煙は止まっていた。
智「もう…何なんだよ…」
またりーだーが半べそになる。
翔「………潤…?」
「………え?」
見下ろすとそこには…ゆっくりと目を開く翔の姿があった。
翔「じゅ、ん…」
「翔!!翔っっ!!」
生きてた…生きてた!!
和「さと…」
智「かずぅ!!うわぁぁん!!」
それはにのも同じみたいで…。
俺達は泣きながら妻を抱き締めた。
でも…。
「………え?何…これ…」
翔「え…?」
智「か、かず…」
和「………?」
「うわぁっっ!!」
智「何だこれぇっっ!!」
リビングに俺とりーだーの絶叫が響いた…。