第34章 魅惑の薬
翔「………」
和「翔さんどう?」
翔「………」
「翔?」
智「翔くん?」
「………まずーい!!」
「え!?」
顔を歪めた翔が慌ててテーブルのグラスに赤ワインを注ぎ、一気に飲み干した。
翔「げほげほっ…ふぅーっ…」
和「え。そんなにまずいの?」
翔「まずいし何か臭い!」
「うわー…」
智「やっぱ媚薬なんかじゃ無いんだな」
和「どれどれ…」
にのが蓋を開け、匂いを嗅いだ。
すると…
翔「たぁっ!にのもっ巻き添えっっ!」
和「ふぐっ!」
翔が瓶を押さえつけにのの口に捩じ込み、液体がにのの口の中に入る。
和「んぐっ…な、何これっっ!!まっず!!」
翔「あっはっは!!」
翔さんから離れ咳き込むにの。
翔はキャッキャッと子供の様に笑いながらソファーに座り込んだ。
和「翔さんの馬鹿ぁっっ!!嫌い!!」
りーだーの持っていたワイングラスをひったくり、ワインを一気に流し込んだ。
翔「あははっ…お腹痛い!面白い…!!」
「全くこの酔っぱらい」
その光景に俺も面白くなり、笑ってしまった。
翔「はぁっはぁっ…お腹痛い…はぁっ…ふぅ………ん…ん…?」
和「あーもう!本当臭い!何これ!!」
智「大丈夫?ワイン飲む?」
和「うん。あいばかに電話して文句言わなきゃ。こんなアホなもん買って…」
翔「………」
「やっぱ片栗っぽいの?」
和「いや。それとは違う…何かこう…ヌメッと…」
翔「………潤…」
「どうした?」
笑いながら翔に視線を移すと…さっきまでの赤ら顔とは違い…顔面が蒼白していた。
「………翔?どうした?」
翔「………何か…くるし…」
「翔?」
慌てて翔に近付くと…カタカタと手が震えていた。
「翔!?翔っ!!」
翔「じゅ…い、息が…出来な…」
潤「え!?翔!!」
しがみついて来る翔を慌てて抱き留める。
智「かず!?」
りーだーの声がして振り返ると…にのも全く同じ状態でりーだーに抱えられていた。
翔「た、たすけ…」
「翔!!翔っっ!!嘘だ嘘だ!!何だよこれ!!」
和「さ、と…」
智「かず!!しっかりしろ!!」
翔「じゅ…」
和「さと、し…」
そしてそのまま…翔とにのの呼吸が止まった…。