第33章 太陽の兄弟
看護師「松本さん。こちらにどうぞ」
「はい」
動物病院に来てから約1時間後。
ようやく呼ばれた俺達はソファーを立ち上がった。
潤マネ「私ここで待ってますから」
「ごめん、ありがと」
マネージャーを残して診察室へと入った。
翔「わ…」
診察台に横たわる包帯を沢山巻かれ、管で繋がれた真っ黒の子猫がぐったりと横たわってる。
翔「先生…この子は…」
獣医「後ろ足の骨折と…少し内臓をやられてました。今は麻酔が効いてますし…まだ何とも」
「助からないんですか?」
獣医「今晩が山でしょうね。目を覚ましてくれればとりあえずは安心なんですがね。今日は入院という事で。明日もう一度来て貰っても宜しいですか?」
翔「あ、あの先生…」
獣医「どうしました?」
翔が言いにくそうに口を開く。
翔「その子猫…うちの子じゃなくて…」
獣医「そうなんですか」
翔「はい…。跳ねられたのをたまたま目の前で見て…」
獣医「それは…困りましたね」
翔「あ、勿論支払いはしますけど…今後の事は…」
獣医「傷が回復すれば…保健所に連絡する事になりますが…」
太陽「パパ…にゃんにゃんおっきしない?」
「そうだな…明日にはおっきするよ」
太陽「にゃんにゃんおうちでねんね?」
「いや…それはどうかな…」
獣医「生き物を飼うというのはそれ相応の覚悟が必要ですよ。お金も掛かる。しつけもそうですし…生活が変わります。小さなお子様が居るなら尚更です。この子をどうするか…一晩考えてみて下さい」
翔「はい」
「太陽。にゃんにゃんにばいばいは?」
太陽「………ばいばい…」
意識のないその子猫に太陽は寂しそうに手を振った。